2011年11月24日木曜日

世界における若者の失業問題について②

前回世界総体での失業率を見たが、より細かく見ていくと若年世代の失業率にはいくつか特徴がある。今回は地域別の数字と若者世代とその上の世代を対比した場合の数字を見る。

【地域別失業率】
ポイント4. 若年世代の失業率には世界各地で大きな地域差があり、そして地域内の国ごとにも大きな差がある

世界の地域別若年世代失業率(1991-2011):


ILO(2011)

グラフ中の黒マークはこの期間のピークを表す。上の図を見ると以下がわかる。
  • 2010年時点で見た場合若年失業率は、1.中東、2.北アフリカ、3. 中央及び南東ヨーロッパ&CIS地域、4. 先進諸国及びEU、5. ラテンアメリカおよびカリビアン諸国、6. 東南アジア及び太平洋地域、7. サブサハラアフリカ地域、8. 南アジア、9. 東アジアの順に高い
  • 上記の地域別失業率は1990年代-2010年までの間は地域間で収束するような傾向は見られない
  • (先進国以外の)東および南アジア地域の失業率は世界の他の地域と比べて低い。また2008年以降の金融危機以降にも失業率の極端な増加は見られない
  • 北アフリカ・中東地域はこの期間慢性的に失業率が高かった(これらの地域で起こった動乱の要因?)
  • 先進国およびEUの失業率は2008年(ピーク時)以降急増している
上記は地域別の比較であり、当然ながら地域のなかで国ごとに見た場合に失業率には大きなばらつきがある。以下先進国およびEUに関して、2008年以降の金融危機の影響を見るため、ILO(2011)レポートからいくつかの国をピックアップし、2007年(金融危機前)と2010年(金融危機後)の若年世代の失業率をグラフにした。
出所:ILO(2011)から筆者作成
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上記の国では:
  • ほぼすべての国において金融危機の後では失業率が上昇している(ドイツとスイスは例外だが)
  • 上昇の幅は国ごとに大きな差異(スペインとドイツ等)があり、上昇の原因は構造的なものと循環的なものが2つあるように思われる
  • 日本はドイツ、スイス、オランダ、ノルウェイなどと並び失業率の絶対値が小さい
なお、前回も書いたが、「非労働力人口」に含まれる人は失業率の計算に換算されないため、現在非労働力人口に換算されている「不況などで仕事を探すことを諦めた人」等を失業率に換算した場合、実際の失業率はこれよりもはるかに高いのでは、という懸念がある。

【壮年世代(adult)と若年世代(youth)の失業率の対比】
ポイント5. 先進諸国の平均で見た場合、若年世代(15-24)の失業率はその上の世代(25-54)の失業率と比べて平均で2倍ほど高い

以下はThe EconomistのWebに掲載されたグラフ (Dec 16th 2010, The Economist online)で、縦軸に若年世代(15-24歳)の失業率、横軸にそれよりも上の世代(25-54)の同時点での失業率をとり、表中に点を国ごとにプロットしている。より詳しい算出方法はそれぞれ該当する世代の失業人口/労働力人口、時点は2010年の第二四半期末[6月末]。


グラフ中、EQUAL RATIOと表記のある線は両世代の失業率が等しい(1:1)ことを示す線で、これより傾きが大きくなるほどほど若年世代の失業率の比率がその上の世代のそれに対して大きくなる。
→例えばTWICE AS HIGH[2:1]は若年世代の失業率がそれより上の世代に比べて2倍ということ

これを見ると、世界的にみて、若年世代の失業率はその上の世代のそれに比べて概ね2から3倍ほど高くなるということが分かる。個別の国についてみると:
  • 日本はほぼ傾きが2(Twice As High)の線上に位置している(=若年世代の失業率はその上の世代のそれの約2倍ということ)
  • OECD諸国のアベレージは2よりも若干大きい水準
  • いわゆる北欧諸国(Norway、Sweden、Finland)は傾きが3の線上に位置している
  • スペインやギリシャの若年失業率には景気後退の波だけではなく、なんらかの構造的要因があるように見える
  • ドイツやスイスの傾きが1に近く、かつ失業率も相当低い
なお、この現象は先進諸国だけのものではない。以下は少し古いがThe Economistが同趣旨のグラフで中東をクローズアップしたもの(2008年)。なお、表中の赤いラインと赤文字は筆者が目分量で挿入した。
中東はもともとの失業率が高いうえに、若年層の失業率はさらにそれの2倍以上だとわかる。