2011年12月28日水曜日

ノルウェー首相のスピーチ④ 政治が約束すること

今回は2011年8月1日に議会で行われた追悼式のさいの首相スピーチ(原文はここ)
         出所: BBC
ノルウェーの政治制度は立憲君主制である。君主の地位は象徴的なもので、実質的な行政は議会によって選ばれた内閣が行う。議会は二院制だが、実質的には一院制とされる。議会は法律の制定と国家予算の承認、内閣の監視等を行う。

2005年10月に行われた選挙により、議会の中での最大勢力は左派の労働党(Labor Party)であり、169議席中64議席(37.9%)を占めている。労働党はSocialist Left Party、Center Partyと連立することで議会内のマジョリティ(87/169)を握っているノルウェーの行政区分は19の県と400以上の市町村に分かれている。
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ノルウェーは現在EUのメンバーではない。1972年と1994年にEUへの加盟についての国民投票が行われたがEUへの加盟は否決されている。なお国防に関しノルウェーでは19-44歳の男子に徴兵義務がある(ソース
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ノルウェー議会の追悼式での首相スピーチ 2011年8月1日
イェンス・ストルテンベルグ ノルウェー首相

陛下、殿下、大統領閣下、
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722日、ノルウェー国民は究極の試練にさらされました。
我々の地図は引き裂かれました。
コンパスは撃たれ粉々になりました。
我々一人一人が皆、ショックと恐怖と破壊の中、進む道を見出さなくてはなりませんでした。
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その選択はひどく間違ったものとなりえたかもしれません。
我々は道に迷っていたかもしれません。
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しかし、ノルウェーの人々は自身の道を見出しました。
暗闇と不確かさのなかからノルウェーに帰る道を見出したのです。
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今日私はこのことに対して感謝をしたいと思います。
我々はいまだ悲嘆のなかにいる国です。
我々はウトヤ島と政府市庁舎で亡くなった方々を埋葬しています。
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両親は病院のベッドの傍らに腰かけています。
多くの人々が悲嘆に暮れています。
我々のハートは悲痛に暮れています。
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嘆き悲しむ人々を慰め続けるましょう。
苦しんでいる人々を気にかけてください。
死者を悼みましょう。

しかしながら、また私は皆さんにお礼を言いいたいとも思います
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国王陛下、皇太子殿下、そしてロイヤルファミリーの皆様が示された暖かさと思いやりに感謝したいと思います。
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危機の最中国家が団結する必要があったとき、ノルウェー議会が示した結束する意思と能力に感謝したいと思います。
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我々が感謝するべき方々はまだたくさんいます。
警察官。
消防士とレスキューサービス。
医療関係に従事した方々。
軍事関係の方々。
市民護衛団。
ノルウェー教会そしてほかの宗教と信仰にもとづいたコミュニティー。
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ボランティア組織。
政府市庁舎とウトヤ島でかけがいのない援助を行ったボランティアの方々。
被害をうけた省庁の職員。
Sundvoldenホテルのスタッフ。
Tyrifjorden湖の近くにいて勇気ある行動をしたすべての人々。
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彼らの多くは自身の命を危険にさらしました。
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821日の日曜日、我々は国家追悼式で直接被害にあわれたすべての方、そして救いの手を差し伸べたすべての方の勇気に敬意を表するでしょう。
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私はまた世界中から届いた親切な言葉と弔慰に対して感謝したいと思います。
それらは手紙で、花で、そしてFacebookやその他のソーシャルメディアを経由したメッセージで届きました。
我々は孤独ではないと感じました。これは我々に力を与えてくれました。
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しかし私が最も感謝を述べたいのはノルウェーの人々です。
ノルウェーの人々は最も必要とされるとき、その責任を果たしました。
人間としての品位を保ち続けました。
デモクラシーを選択しました。
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なかでも若者は最も大きな称賛を得るに値します。
労働党青年支部は銃火を浴びました。
けれど、全世代が結集し、悲痛な抗議に参加したのです。
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722日の世代は我々のヒーローであり、希望です。
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これは我々が、我々の根本である価値観への信頼を新たにし、将来を期待することができるということです。
加えて、まっとうな対話とより一層の寛容への人々のコミットメントが育ち続ける、という希望に溢れた将来を期待することができるということでもあります。

この追悼に臨むにあたり、我々の多くは立ち止まり、自身の立つ位置を考えます。
考えと言葉を反芻します。
722日の悲劇の後で振り返ると、我々は自身の意見を違った形で表現すべきだったと気付くこともあるでしょう。
そして我々はこれからは自身の言葉をより注意深く選択するでしょう。

しかし私は人々に魔女狩りを始めないよう、言われるべきでなかったことを探したりしないようお願いしたいと思います。
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我々はあの非現実的な時期に、特別な連帯を示しました。今我々は今後もお互いによき意図をもって接し続けなくてはなりません。
我々はこの悲劇から何かを学ぶことができます。
我々が皆、「私は間違っていた」と述べることが必要なのかもしれません。そのようなさい我々は尊敬をもってお互いに向かい合うべきです。
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これは日々の会話でも公の議論でも同様です。
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これは政治家にも編集者にもあてはまります。
これは食堂でもインターネットの上でも当てはまります。
これは我々すべてに当てはまるのです。
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我々は政治家として、我々が日々の仕事を再開するにあたり、722日の精神を保ち続けることを約束します。
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ノルウェーの人々が示したのと同様の知恵と尊敬を示し続けます。
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言論の自由を武器とし、議会に伝わる最良の伝統を受け継いで、我々は人間の尊厳と安心感は恐怖と憎悪に打ち勝つ、ということを守り続けます。

我々はこれをノルウェーの人々に負っているのです。