2011年10月25日火曜日

絵画-ゴヤ→ドーミエ

今月の22日から来年の1月29日まで国立西洋美術館でゴヤ展が行われているようだが、ゴヤは請負により膨大な絵を描く一方で、解釈が難しい絵も多く描いた人で、私はこの画家がとても好きだ(まだゴヤ展にはいっていないが)。

ゴヤが生き、描いた時代(1746-1828)はヨーロッパがフランス革命→ナポレオン→反動の時期を経験した時代と重なっており、ヨーロッパにおいて近代社会が姿をあらわした時代である。当然ながら当時フランス等からみるとヨーロッパの辺境だったスペインにもこの動乱は大きな影響を及ぼした。

実際18世紀のスペイン社会は働かない貴族や坊主、腐敗した教会、未だ存続していた異端審問官(!)、「夜とイエズス会は必ず戻ってくる」といわれたイエズス会等のキャストが社会の上層部を占め、これらの層はありとあらゆる無茶苦茶な破廉恥騒ぎを行い、これに国王・王妃・大臣も加わっていたそうだから、さぞや素敵な社会であったのだろう(庶民の生活は悲惨だが)。

これらの近代社会にはみられない「何をやって生活してるんだか分からない」(こういう発想は典型的に近代的なものだが)雑多な人々は、ナポレオン以後のフェルナンド七世による超反動政治、その後に続く内戦期においてもスペインに影響を与え続けた。

ゴヤは本質的に18世紀人であり、その時代の画家は近代的な意味の芸術家というより絵画の請負職人といった色合いが強かったようで、スペインの宮廷画家としての職務は王室や貴族の肖像画やどこかに飾るための絵を描くことだったらしいが、彼の絵のなかで私は以下の絵がよく分からず、気になっていた。




The Junta of the Philippines or Sessions of the Junta of the Royal Company of the Philippines (Spanish: Junta de la Compaia de Filipinas), Francisco Goya 1815

この絵はRoyal Company of Philippine(王立フィリピン会社とでも訳すか?)のミーティングを祝するものとして王室からの発注に応じて描かれたのだが、この絵の中の株主達(画布左・右下)は画面中央の王(フェルナンド七世)を完全に見くびって椅子にだらしなく座り、でれでれしている。完全な近代的俗物であり、王の権威も何もあったものではない。これを王への献上品として描く画家がどういう神経をしているのかまったくわからないが、私はこの株主達を見るとドーミエ(Honore-Victorin Daumier:1808-1879)の以下の絵を思いうかべる。
この絵のビジネスマンはゴヤの株主達の直系のように見える。

さらに言えば、社会の上層部を占める人間達は19世紀このかた今日に至るまで、この絵のように、定刻から少し遅れて会議室に集まり、ぎょうぎょうしく正装しつつだらしなく座り、しかめ面をしながら横にいる輩と駄弁に耽ったり、勿体ぶって書類をくりながら実はどうでもいいことを妄想したり、あるいは昨晩の乱痴気騒ぎが原因で居眠りをしたりしながら、小金儲けのための会議をしてきたのだし、これからもそうするのだ。

そして今後、このような場面が繰り広げられる領域は拡大の一途をたどり地球はこの手の紳士・淑女で溢れ、彼・彼女達は果ては宇宙にまで進出するのだ

・・・・・・ゴヤとドーミエはあまり並べて論じられることがないようだが、互いの絵には類似点がたくさんあると思う。。