直近で両国間の外交問題となっているのが、アメリカから台湾への武器輸出。中国は当然のことながらこれに反発している。
1979年にアメリカは中国を国として承認したため、台湾との外交関係を絶った(いわゆるニクソン・キッシンジャー外交の一環)。そのさいにアメリカ議会は(中国からの侵略から)台湾を防衛するため、アメリカ政府が台湾に兵器を供給するための法律をつくった。
この武器供給に対して中国政府は反対。そもそも中国は台湾の国としての独立を否定しているため「台湾の中国からの防衛のために」という名目のもとに行われる兵器の売却を認めるわけがない。
問題の前提として中・台間の軍事力は圧倒的に中国が上回っており、今回焦点となるF-16の台湾への売却で実質的なバランスが変化することはないが、この武器売却の継続は、アメリカによる台湾支援の継続の表れ、とみなされている(実際に台湾海峡で紛争がおこったさい、今のアメリカに介入する余力が残っているかは定かではないが)。
MSNの記事は米・中政府間の摩擦を伝えている。
The Economistはこの件に関し、台湾への武器供給の継続及びアメリカの台湾への支援を明確に支持している(Dim sum for China, The Economist, Sep 24, 2011)。以下抜粋。
But to walk away from Taiwan would in effect mean ceding to China the terms of unification. Over the long run, that will not improve Sino-American relations. Five thousand years of Chinese diplomatic history suggest it is more likely to respect a strong state than a weak and vacillating one. Appeasement would also probably increase China’s appetite for regional domination. Its “core interests” in the area seem to be growing. To Chinese military planners, Taiwan is a potential base from which to push out into the Pacific. At minimum, that would unsettle Japan to the north and the Philippines to the south.
Strong American backing for Taiwan has served the region well so far. It has improved, rather than damaged, cross-straits relations, for Mr Ma would never have felt able to open up to China without it, and it has been the foundation for half a century of peace and security throughout East Asia (see Banyan). To abandon Taiwan now would bring out the worst in China, and lead the region’s democracies to worry that America might be willing to let them swing too. That is why, as long as China insists on the right to use force in Taiwan, America should continue to support the island.
しかしながら、(この問題で)台湾を見捨てるということは、実際には(注:中国が主張する)台湾併合の条件に関して中国に対して譲歩するということだ。それは長期的には中国・アメリカ関係を向上させはしないだろう。5,000年に渡る中国外交の歴史は、中国が弱く煮え切らない国家よりも強い国家を尊重することを示している。また、(注:この問題での中国への)融和は中国の台湾地域の支配への欲求を高めることになるだろう。中国が当該地域に対して有する利害関係(注:"Core Interests"を訳せなかった)は増しているようである。中国の軍事計画の担当者にとって、台湾は(注:中国軍が)太平洋にでていくための潜在的な足がかりである。少なくとも、それは北においては日本を、南においてはフィリピンを動揺させるだろう。
アメリカの台湾への強固な支援は、これまで(台湾周辺の)地域によい結果をもたらしてきた。それは海峡を挟む中・台関係を傷つけるものではなく、むしろ向上させてきた。それがなかったら馬氏(注:台湾の現総統)は中国に対して決して門戸を開けなかったろう。それは半世紀にわたる東アジアの平和と繁栄の基盤となってきた(今週のBanyanを参照:注:BanyanはThe Economistのアジアにフォーカスしたコラム)。今、台湾を見捨てることは中国が持つ最悪の部分を引き出すことになるかもしれないし、自分たちが不安定な立場におかれたさいにもアメリカは放置するかもしれない、という不安を東アジアの民主主義国家に抱かせるだろう。したがって中国が台湾への武力行使の権利を主張する限り、アメリカは台湾を支援し続けるべきである。なお当該記事のコメント欄は賛否入り乱れてにぎやかになっている。