2011年10月12日水曜日

絵画-ゴヤと古谷実の妖怪

前から思っているのだが、ゴヤの版画集「気まぐれ」に描かれる妖怪(?)は漫画「ヒミズ」に出現する妖怪によく似ている。
画家が聴覚を失った後に描かれたこの版画集(1797-1799年)は、当時のスペイン社会の腐敗・汚職・堕落を痛烈に批判・告発している、といわれていて、それはたしかにそうなのだろうが、同時にこの版画集は、画家(当時彼はスペインの宮廷画家)が不本意にも強いられた静寂の中時代を酷薄なまでに生々しく観察している、という感じを見るものに与える。


直後にスペインを襲う動乱(それはナポレオンという現象によって引き起こされる)と後年のゴヤ自身の変貌までも示唆している、といわれるこの版画集を古谷実はヒミズの執筆時に知っていたのか、ほんの少し興味がある。


以下ついでにゴヤ後期のいわゆる黒い絵に連なる連作から「和が子を喰らうサトゥルヌス」。
ヒミズの映画版は来春日本で公開されるようだが、漫画版で描かれていた妖怪はどう取り扱われるのだろう。