2011年10月18日火曜日

世界- 安全資産の不足③

前回までカバレロとバーナンキの議論を見ながら世界における安全資産不足という問題を概観した。

カバレロ(とある程度はバーナンキも)の理論は世界で実際におこっている以下の事象を統一的なフレームで説明しようとする試みであり、ある種壮大である(これぞマクロ経済理論という感じ?)。
  • グローバルインバランス:世界の主要国の経常収支間で継続して続く不均衡。具体的にはアメリカが巨額の経常収支を抱え、日本・ドイツ・中国・その他アジア等の国々が経常収支の黒字(資本収支の赤字)を継続している状態(グラフ1*参照)
  • 米国および世界金利の低下:貯蓄過剰国(これらの国は金利が低くなる)からの資金の流入(=米国債の買い支え)による米国の長期金利の低下(グラフ2*参照)
  • 世界で頻発するバブル:これらも資産不足による希少資産への資金流入による(グラフ3**参照)
*グラフ1とグラフ2はMaurice Obstfeld and Kenneth Rogoff, 2009, "Global Imbalances and Financial Crisis: Product of Common Causes", Federal Reserve Bank of San Francisco Asia Economic Policy Conference October 18-20, 2009の中のFigure1及びFigure6を転載。
**グラフ3はRicardo Caballero, Fall 2007,"The Macroeconomics of Asset Shortages",を転載。

上記の各事象自体は実際に起こっているため、その存在を否定することはできないが、それぞれに対して安全資産の不足以外の要因を指摘する議論もあるようだ*。
*特にグローバルインバランスについてカバレロは途上国における安全資産不足に起因する先進国への資産フローがグローバルインバランスの原因ととれるような議論をしているが、これについてはそれぞれの国内の貯蓄と投資のバランス(基本的にこれが経常収支を決定する)の偏りがグローバルインバランスの原因(=米国は消費しすぎ、貯蓄しなさすぎ)である、とする見方も根強く、筆者には判断がつかない。

グラフ1: 世界の経常収支1995-2009
グラフ2:主要国の長期実質金利の推移
グラフ3:世界で頻発したバブル