【若年層が直面する障壁への対策】
ポイント12: 4つの問題群に対しては以下のような対策案が挙げられている(ILO(2010))。
- スキルのミスマッチ:
- テクニカルスキルのミスマッチ
- 職業訓練: 需要のあるセクターに必要なスキルを教室で教える。通常は政府の資金によって運営される
- 職業訓練+実地教育:上記の教室での授業に加えて、現場でのトレーニングを行う
- 起業家教育:若い起業家に対して必要であり概して欠けているスキルのサポートをする
- ノンテクニカルスキルのミスマッチ
- ソフトスキル及び生活上の知識などを教えるトレーニング(対象となるのは未成年であったり教育を受けられない層である)
- 需要と若者への差別:
- 需要不足
- 若者を雇用することにより企業が負担する賃金及びトレーニング費用の全部または一部の政府の補助金による負担
- 直接的かつ一時的に政府が仕事を若者に与える。特に経済危機などの場面で若者には貴重なセーフティネットとなる場合がある
- 若者への差別
- アファーマティブアクション: 法律により若者への雇用を義務付けたり、若者を雇用した企業に補助金を出したりする
- メンタリング:企業内でのメンター制度
- 労働市場における情報のギャップに関する問題:
- ジョブサーチの失敗:政府による若者のための職業斡旋サービス
- シグナリング:政府による技術の認証制度(資格制度)
- 起業家支援
- 政府による総合的な若年起業家支援プログラム
個々は詳述すると長くなるので、より詳しく知りたい方はILO(2010)を参照(リンクはここ)。
レポートの性格上、施策が包括的なものになり、結果として当然のことながら、提案される政策は個々の国の状況を踏まえたものにはなっていない。ILOがレポートを発行した主な動機は、各国がこの問題の重要性をきちんと認識し、対策を真剣に考えることを促すことにあると思われる。
レポートの性格上、施策が包括的なものになり、結果として当然のことながら、提案される政策は個々の国の状況を踏まえたものにはなっていない。ILOがレポートを発行した主な動機は、各国がこの問題の重要性をきちんと認識し、対策を真剣に考えることを促すことにあると思われる。
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上記の対策への追加としてILO(2010)の1年後にリリースされたILO(2011:リンクはここ)は、「政府が政策を考える際の雛型として以下が参考になるかもしれない」として政策ストラテジーのデザインよりもう一段階上のレベルで政策を策定するさいの留意点を以下のように紹介している。以下は当該ページ(ILO(2011)のP8)の原文と訳。
Recommended policy measures for promoting youth employment
若者の雇用の促進のための推奨される政策案について
Many governments are actively engaged in finding solutions, although the severity of the situation of young people in the labour market requires more attention and policy action. The following actions could be considered as a basis for tailoring youth employment interventions to the national situation:
労働市場における若者を取り巻く状況の厳しさに関しては、現状なされているものより一層の注目と政策的アクションを必要とするものの、多くの政府が能動的にこの問題のソリューションをみつけようと取り組んでいる。以下の施策は、若年層の雇用を焦点とした介入をそれぞれの国家の状況にあわせて調整するさいの一つの基礎として考え得るものである。
Develop an integrated strategy for growth and job creation to ensure long-term, sustained and concerted action for the promotion of decent work for young people. Assigning priority to youth employment requires a coherent policy framework, with measurable targets and achievable outcomes, that addresses youth employment in national development strategies and employment policies.
若者がまっとうな仕事に就くことを振興するための長期的で継続的かつ協調的な施策が確実におこなわれるようにするため、経済成長と雇用創出のための総合的なストラテジーを立てる。若者の雇用に政策のプライオリティを割り当てるためには、一貫した政策的枠組みが必要であり、その枠組みは、若年層の雇用問題を国レベルの開発戦略と雇用政策の中で扱うための、測定可能な目標と実現可能な成果を備えている必要がある。
Establish broad-based partnerships to turn youth employment commitment into reality. Partnerships among governments, employer organizations, trade unions and other organizations can be instrumental in determining the most appropriate action to be taken at national and local levels for the promotion of decent work for young people. Action plans on youth employment can be used as a tool for the conversion of youth employment priorities into concrete action and to strengthen the coordination of youth employment interventions.
若者者雇用に対するコミットを実現させるため、広範なパートナーシップを確立する。政府、雇用機関、労組、その他の機関の間のパートナーシップは、若者がまっとうな仕事に就くことを振興するため、国と地方レベルでとられるべき最も適切なアクションを決めるさいに有益である。
Improve the quality of jobs and the competitiveness of enterprises with a view to increasing the number of jobs in productive sectors and ensuring job quality for the many young people who are currently engaged in precarious jobs, especially in the informal economy. Together with labour legislation, these measures can reduce labour market segmentation based on the type of contract and job and can help young people move to decent jobs.
現時点で、不安定な仕事(特に非合法な経済での)に従事している多くの若者のため、生産的なセクターでの雇用を増加させ仕事の質を確保することを目的として、仕事の質と企業の競争力を向上させる。労働法制と併せて取り組まれることで、これらの施策は雇用契約と仕事のタイプに基づく労働市場の分断の度合いを軽減させることができる。
Invest in the quality of education and training and improve its relevance to labour market needs. Education and training programmes that equip young people with the skills required by the labour market are an important element in facilitating the transition of young people to decent work. These programmes should be based on broad skills that are related to occupational needs and are recognized by enterprises, and should include work experience components. Policy coherence and more effective coordination across education and training systems and labour market institutions should be pursued at all levels, including between Ministries of Education and of Labour, as well as public employment services, private employment agencies and education and training providers.
教育とトレーニングの質をあげるための投資を行い、労働市場からの需要に教育やトレーニングがきちんと答えられるようにする。労働市場で必要とされるスキルを若者に備えさせるための教育とトレーニングプログラムは、若者がまっとうな仕事に就くことを促進するにさいして、重要な要素である。これらのプログラムは、職業上の必要性に基づき、企業に重要だと認識されているスキルを基礎に構築されるべきである。政策の一貫性と教育・トレーニングシステムと労働市場に関係する機関との間での一層効率的な協調というアジェンダは、教育と労働を管轄する省庁間、公的および民間の雇用斡旋機関、教育・トレーニング提供機関を含むあらゆるレベルで推進されるべきである。
Enhance the design and increase funding of active labour market policies to support the implementation of national youth employment priorities. Active labour market policies and programmes (ALMPs) programmes should offer a comprehensive package of services with a view to facilitating the transition of youth to decent work. Standard types of ALMPs based on single measures are unlikely to work for discouraged youth or for young workers engaged in the informal economy, especially during crisis and post-crisis periods. The effectiveness of these measures could be greatly improved by introducing mechanisms that target disadvantaged youth and by piloting programmes and assessing their results prior to their implementation on a larger scale. Funding for these measures should be increased to ensure greater support during the post-crisis period. Lack of support for these employment measures would have dramatic consequences for the current generation of young people.
若者の雇用に関し重要度の高い課題の推進を支援するため、国家レベルで積極的な労働政策を行うための資金を増額する。積極的な労働政策とALMPsプログラムは、若者のまっとうな仕事への就職を支援することを目的として、包括的なサービスのパッケージを提供すべきである。単一の施策に基づいた標準的なタイプのALMPsは、特に経済危機中や危機後の期間においては、職探しをあきらめた若者や非合法な経済での仕事に従事している若者に対して効き目がない可能性が高い。本格的に施策を実施する前に、不利な境遇にいる若者に対象を絞って試験的なプログラムを実施し、その効果を測定するメカニズムを導入することで、これらの施策の有効性を大幅に向上させることができる。経済危機後の期間において一層大きなサポートを可能にするために、これらのプログラムに使われる資金は増額されるべきである。これらの雇用政策への支援の欠如は、現在の世代の若者に対し、劇的(に悪い)な帰結をもたらす可能性がある。
Review the provision of employment services with the objective of offering a set of standard services to all young people and more intensive assistance to disadvantaged youth. Public employment services should re-orient their services to offer “standard” support to all young jobseekers (for example, self-service, group counseling and job search techniques, including employment planning) and more intensive and targeted assistance for “hard-to-place” youth. Early interventions based on profiling techniques and outreach programmes should be developed at the local level to make the services more relevant to young people and to assist enterprises in the recruitment process. Partnerships between employment services and private employment agencies are important to support young people in their job search. Partnerships between labour offices and municipal authorities, the social partners, social services and civil society organizations are required to improve the targeting of young discouraged people and young workers engaged in the informal economy who do not usually fall within the reach of the public employment service.
すべての若者に雇用に関する標準的なサービスを提供するとともに、不利な境遇にいる若者にはより一層の支援を提供することを目標として、提供されている雇用支援サービスを見直す。公的な雇用助成機関は、すべての求職者を援助するための標準的なサポート(例として、仕事に関するプラニングを含む個人ベースでのサポート、グループカウンセリング、ジョブサーチのための技術)を提供するとともに、仕事をみつけるのが難しい若者に対してはより一層対象を絞った集中的な助成を提供するため、自身が提供するサービスを再設計すべきである。雇用助成サービスを若者のニーズにより適合したものとし、リクルート活動を行っている企業を助けるため、プロファイリングのテクニックと福祉プログラム(?)を基礎とした早期の介入を地域のレベルで導入するべきである。雇用助成機関と民間の職業紹介所とのパートナーシップは求職中の若者を支援するために重要である。労働省、地方の管轄機関、ソーシャルサービス、市民団体との間のパートナーシップは、通常公的雇用助成機関のサービスの対象とならない、職を探すのを諦めたり、非合法な経済での仕事に従事している若者を支援するさいの対象設定の精度を向上させるために必要である。
Pursue financial and macroeconomic policies that aim to remove obstacles to economic recovery:Job growth will not come from labour market policies alone. Additional financial and macroeconomic measures, including bank and debt restructuring, are needed to remove the obstacles to growth.
景気回復の障害を除去することを目標とした、金融・マクロ経済政策を引き続きおこなう: 雇用の成長は労働市場における政策のみでは達成されない。雇用の成長への障害を取り除くためには、銀行と負債のリストラクチャリングを含めた追加的な金融・マクロ経済的な政策が必要である。