2011年11月29日火曜日

世界における若者の失業問題について⑤

以下ここまでこの問題に関するポストで挙げたポイントを列挙する。
  • ポイント1. 1991年から2009年にかけて世界の若者人口は約20%増加しているが、それに見合った割合で労働力人口や就業者数は増えなかった。
  • ポイント2. 若者人口の増加に見合うだけの就労者数の増加がおきなかったため、同期間において就労者数が総人口に占める割合(就業者率)は一環して低下している
  • ポイント3. 世界全体で見た場合、若年世代の失業率は1992年からほぼ上昇しており、2005-2007にかけて急減したが、2008年から上昇し、2005年以前の水準に戻っている
  • ポイント4. 若年世代の失業率には世界各地で大きな地域差があり、そして地域内の国ごとにも大きな差がある
    • 2010年時点で見た場合若年失業率は、1.中東、2.北アフリカ、3. 中央及び南東ヨーロッパ&CIS地域、4. 先進諸国及びEU、5. ラテンアメリカおよびカリビアン諸国、6. 東南アジア及び太平洋地域、7. サブサハラアフリカ地域、8. 南アジア、9. 東アジアの順に高い
    • 上記の地域別失業率は1990年代-2010年までの間は地域間で収束するような傾向は見られない
    • (先進国以外の)東および南アジア地域の失業率は世界の他の地域と比べて低い。また2008年以降の金融危機以降にも失業率の極端な増加は見られない
    • 北アフリカ・中東地域はこの期間慢性的に失業率が高かった(これらの地域で起こった動乱の要因?)
    • 先進国およびEUの失業率は2008年(ピーク時)以降急増している
  • ポイント5. 先進諸国の平均で見た場合、若年世代(15-24)の失業率はその上の世代(25-54)の失業率と比べて平均で2倍ほど高い
  • ポイント6:東アジア・先進諸国&EUを除いた地域別でみた場合、若年世代の女性の失業率は男性のそれよりも高い。
  • ポイント7: 全体の傾向として若年層においても女性の雇用機会や給料等の条件は男性のそれよりも悪い
  • ポイント8: 男女格差以外に若年層の内部では以下のような傾向が観察されている(ILO(2010))。
    • 15-19歳の失業率はそれより上の年代(20-24歳)よりも高い
    • ほとんどのOECD諸国において失業率が高いのは、受けた教育のレベルが低い層である。これらの国では教育は失業のリスクを減らす。一方中東や北アフリカにおいては高い教育をうけたものほど失業率が高い。これはこれらの地域において、高い教育をうけたものが就きたがる仕事の供給が、増加する高等教育終了者の数を下回っていることを意味する。結果としてこれらの地域では、高等教育をうけたものが国外に流出しがちである
    • ほとんどの国において、人種的にマイノリティに属する層の失業率はほかの層よりも高い。これは労働市場における差別とこれらのマイノリティの人々のうける教育が他と比較して低くなりがちなせいである
    • 親が貧しければ貧しいほど、子どもが失業を経験する確率が高くなる。労働市場への参入にさいし、貧困層の子供は中間層の子供に比べてより高いを経験する。 
  • ポイント9:2008年の金融危機以降、ほとんどすべての国で若者の長期失業率が上昇している。
次回からこの問題に対して提唱されている対策に触れる。