2011年11月28日月曜日

世界における若者の失業問題について④

前回は若年失業率について男女間の差異をみたが、今回男女格差以外の特徴と長期失業率について。

【若年層内での特徴】
ポイント8: 男女格差以外に若年層の内部では以下のような傾向が観察されている(ILO(2010))。
  • 15-19歳の失業率はそれより上の年代(20-24歳)よりも高い
  • ほとんどのOECD諸国において失業率が高いのは、受けた教育のレベルが低い層である。これらの国では教育は失業のリスクを減らす。一方中東や北アフリカにおいては高い教育をうけたものほど失業率が高い。これはこれらの地域において、高い教育をうけたものが就きたがる仕事の供給が、増加する高等教育終了者の数を下回っていることを意味する。結果としてこれらの地域では、高等教育をうけたものが国外に流出しがちである
  • ほとんどの国において、人種的にマイノリティに属する層の失業率はほかの層よりも高い。これは労働市場における差別とこれらのマイノリティの人々のうける教育が他と比較して低くなりがちなせいである
  • 親が貧しければ貧しいほど、子どもが失業を経験する確率が高くなる。労働市場への参入にさいし、貧困層の子供は中間層の子供に比べてより高いを経験する。 
なおOECD(2008)はこのほかに、貧困地域や郊外地域に住んでいる若者の職をみつけるのに不利を経験しやすい、としている。最後の2項目は個別の要因としてだけではなく、相互に連関する要因として失業に影響を及ぼすと思われる。

【若年層における長期間失業率とその割合】
ポイント9:2008年の金融危機以降、ほとんどすべての国で若者の長期失業率が上昇している。
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失業のなかでも長期の失業(ILOは「1年以上の失業」と定義している)は短期の失業と比較して、社会および失業者双方に与えるダメージがより大きいと考えられている。以下はILO(2011)から長期失業率のグラフを作成したもの(金融危機の影響をみるため2007年と2010年で比較している)。
出所:ILO(2011)より筆者作成
ほとんどの国で長期の失業率が上昇している(ドイツは長期失業率が低下している珍しい国である)。

前々回のポスト(②)で国別の一般失業率(長期も短期も含んだもの)に関し同様のグラフを見たが、以下では長期失業者が失業者に占める割合(=長期失業率÷失業率)を前々回のグラフと上のグラフを使って計算した。
スペイン・ポルトガル・ギリシャ等は一般失業率が高い上に、長期失業者割合も高くなっているため、状況的には見かけの失業率の高さ以上に悪い状態が出現している。逆にカナダ、デンマーク、フィンランド、ノルウェー・スウェーデン等は失業率に占める長期失業者の割合が少ないため、労働市場において仕事がない状態が長期間続き、それが固定化する、といった状態までは至っていないように思える。

ILOは長期失業率の悪化とそれがもたらす可能性のある損失について以下のようにコメントしている。
With labour market conditions continuing to worsen, long-term unemployment among youth has already begun to rise in almost all countries, notably in Spain and the United States.
(訳)労働市場の状況が悪化しつづけているため、若年層の間の長期失業率はほとんどすべての国で上昇し始めています。特に上昇はスペインとアメリカで上昇が顕著です。
The impact of long-term unemployment on youth can be devastating and long-lasting. Young people, who lack general or vocational education and work experience, are especially vulnerable to the crisis.
(訳)若者の長期失業のインパクトは破壊的で、長く継続するものになる可能性があります。一般的または職業的な教育と業務経験を欠いている若者は、経済危機に対し特に弱い存在です。
The longer young persons remain out of touch with the labour market, the more difficult – and costly – it is to return to productive employment. There are also a number of important social implications related to exclusion, including susceptibility to anti-social behaviour, including juvenile delinquency, and social unrest.
(訳)労働市場から除外されている期間が長いほど、若者が生産的な雇用に復帰するのがより難しく、そして費用が高くつくようになります。長期失業にはまた、非行等の反社会的行動に走りやすくなることを含む社会からの疎外や社会的騒乱に関係するたくさんの重要な社会的インプリケーションがあります。