*Congressional Budget Office:連邦議会予算事務局
以下では議会予算局のブログでレポートの要点として挙がっている点を簡単にまとめる。
【家計所得の上昇率(全体)】
1979年から2007年の間に米国の家計所得*(全階級総計)は62%上昇した
*平均実質家計所得(政府移転・税金控除後)
【家計所得の上昇率(階層別)】
- 国民人口の1%をしめる最も高額の所得層(いわゆるトップ1%層)の家計所得は1979年から2007年にかけて275%上昇した
- 最上位1%の次に取得が大きい層(81-99%)の家計所得は同期間に65%上昇した
- 次の層(21-80%)の家計所得は40%弱上昇した
- 下位20%(1-20%)の家計所得は18%上昇した
【各階層が総所得に占める割合】
同期間における家計所得の上にみられるような(不均等な)上昇の結果、2007年において
- 最上位1%の所得層が米国の総家計所得のうち17%を得た(1979年は8%)
- 最上位1%を含んだ上位20%の階層は米国の総家計所得のうち53%を得た(1979年は43%)
- 下位20%が得た割合は7%(1979年)から5%(2007年)になった
上を円グラフにすると以下のようになる。
これを見るとこの期間のアメリカでは、ボトム20%が家計所得に占める割合はほとんど変わらず、ミドルクラスが占める割合の減少分がトップ1%の増加分に対応するような気がする。
多くのメディアはこの期間(1979-2007)の成長は国民の間で平等に享受されたわけではなく、トップ層が成長の果実を他と比較して多く得ていたととらえている(例)。
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これがアメリカだけの現象なのかどうか知るため国際比較ができるデータを探したところ、Andrew Leigh氏のホームページにデータがあったので、以下に各国のトップ1%層が総所得に占める割合をグラフにした(1998年と時点が少し古いが)。
出所:Andrew Leigh HP上のTop Income Shares for 13 developed countriesより
これを見ると国際比較で見てもアメリカはトップ1%層が所得に占める割合が高いことがわかる。他にUKとカナダも数字が大きいことは面白い。
ただ、アメリカ国内の自由市場を重視する側には、この数字だけでもって結果としての不平等とそれを是正するための政策を提唱することに対し反対する意見も多い。例えば経済学者のマンキューは自身のブログ(10月26日のポスト)で、この期間以後2007年から2009年の間に最上位層の所得は大幅に下落したという研究を参照して、トップ層の所得は他の所得のそれに比べ、よりリスキー(=分散の大きい)な所得であると述べている*。
*だからリターンも高くあるべき、ということを意味しているのだと思われる。