以下、アラブ圏で大きな影響力をもつ放送局アルジャジーラ(Aljazeera)のトーク番組「Inside Story」からの抜粋。
Inside Storyは通常司会者が3人のゲストとともに20分ほど様々な題目について討論するトーク番組。
2011年9月15日のInside Storyの題目は「Saudi warn US over Palestine」。司会はLaura Kyle。
現在中東では民主化の流れの中で各国の政治体制の改変が進んでいる。チュニジア、エジプト、リビアでは実際に体制が転換。他にシリア、イエメン等で大規模な民主化要求が起こっている。
これらの体制変更に伴う地域間のパワーバランスの変化の中で最近イスラエルとトルコ・エジプトとの間で衝突が起こっており、中東でのイスラエルの位置に関し、各所から懸念が表明されている。
中東に関してアメリカは一貫してイスラエルに深くコミットしているが、イスラエルを除くとサウジアラビアは現状数少ないアメリカの中東での同盟国。
そのサウジアラビアも、パレスチナ自治政府による国連への加盟申請(パレスチナ自治政府が「国家」として国連への加盟を求める申請)に関し、当該加盟申請への拒否権行使を明言するアメリカに対して強い異議を唱えている。
サウジアラビアのPrince Turki Al-Faisal(FMR Head of Saudi Intelligence)によると、もしアメリカが変わらず拒否権を行使するのであれば、サウジアラビアは今後アメリカの外交方針と相反する外交をイラク・アフガニスタン・イエメンで展開する用意があるとのこと。
今回のInside Storyはこの件に関し、以下の3人のゲストとともに討議。
司会:Laura Kyle
Jamal Khashoggi (以下JK)-Al Arab News Channel:サウジアラビア側の視点を解説
P J Crowley (以下PJ)-Former State Department Spokesman:アメリカ側の視点を解説
Salman Shaikh (以下SS)-Director, Brookings Institute Doha :
以下、討論のなかからいくつかの点を抜き出す。
国連加盟問題:
・PJ:現状パレスチナ側が具体的に国連のどこへ要請するのか分からないので、まだ正確には状況を検討できない(UNの安全保障理事会に行くのか、または安全保障理事会をバイパスして、総会の場に行くのか)。安全保障理事会に行く場合アメリカは拒否権を発動するだろう。総会の場に行く場合は参加国へのアピールを通じてパレスチナ側は自信の地位の向上、それによってイスラエルとの交渉上もレバレッジが得られるかもしれない。
パレスチナ・イスラエル協議
・PJ:現状のパレスチナとイスラエル間協議のそもそもの問題は、イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナのアッバス議長との間で信頼関係がまったくなく、協議そのものを可能にする条件がないこと。
・SS:(上記)信頼関係を醸成できない大きな原因の一つはイスラエルがWest Bankへの入植(Settlement)を継続している点。パレスチナ側は18か月に渡り、イスラエル側の入植者が3倍になるのを見てきた。アッバス議長が望んでいるのは(パレスチナが国家として承認されることで)イスラエルとの関係を国家対国家の関係にして、交渉のポイントを変えることではないか。
サウジアラビア・アメリカの関係
・PJ:(アメリカとサウジアラビアの関係について問われて)現状アラブ諸国でおこっている民主化の影響によりアメリカとサウジアラビアの長年の同盟関係に負担がかかっていることは事実。と同時にアメリカとサウジアラビアでは利益が一致する領域はある(イランの核問題やイエメン等)。
・SS:サウジアラビアとアメリカの同盟関係は1940年代以降(あるいはもっと以前から)、中東を形作ってきた。今回のアラブの民主化に伴い新しい中東がどのようになるのかはまだわからないが、将来の中東は今後のアラブ諸国とイスラエルとの間の争いがどのように進行するのかによって形作られる気配が濃厚だと思う。
・JK:(現状アラブ諸国がアメリカに対して持つイメージについて聞かれて)アラブ諸国はアメリカが民主化運動に対して払った労力について一定の敬意を払っていると思う。ただし、現状の混乱が収まった後には(when the dust settled)、「パレスチナはどうなるのだ」という点にアラブ側の注意が行くことになる。この点についてリビアからも同じ疑問が早期に出されるだろう。パレスチナ問題はアラブ側にとってとても重要な問題である。アメリカはこの問題について手当てする必要がある。状況はイスラエルにとっても刻一刻と変わっている。直近イスラエルは過去にないほどのプレッシャーにさらされている。この問題についてトルコはアラブ側についている。エジプトも。イスラエルはアラブをより対等の立場で扱う必要がある。
Inside Storyは通常司会者が3人のゲストとともに20分ほど様々な題目について討論するトーク番組。
2011年9月15日のInside Storyの題目は「Saudi warn US over Palestine」。司会はLaura Kyle。
現在中東では民主化の流れの中で各国の政治体制の改変が進んでいる。チュニジア、エジプト、リビアでは実際に体制が転換。他にシリア、イエメン等で大規模な民主化要求が起こっている。
これらの体制変更に伴う地域間のパワーバランスの変化の中で最近イスラエルとトルコ・エジプトとの間で衝突が起こっており、中東でのイスラエルの位置に関し、各所から懸念が表明されている。
中東に関してアメリカは一貫してイスラエルに深くコミットしているが、イスラエルを除くとサウジアラビアは現状数少ないアメリカの中東での同盟国。
そのサウジアラビアも、パレスチナ自治政府による国連への加盟申請(パレスチナ自治政府が「国家」として国連への加盟を求める申請)に関し、当該加盟申請への拒否権行使を明言するアメリカに対して強い異議を唱えている。
サウジアラビアのPrince Turki Al-Faisal(FMR Head of Saudi Intelligence)によると、もしアメリカが変わらず拒否権を行使するのであれば、サウジアラビアは今後アメリカの外交方針と相反する外交をイラク・アフガニスタン・イエメンで展開する用意があるとのこと。
今回のInside Storyはこの件に関し、以下の3人のゲストとともに討議。
司会:Laura Kyle
Jamal Khashoggi (以下JK)-Al Arab News Channel:サウジアラビア側の視点を解説
P J Crowley (以下PJ)-Former State Department Spokesman:アメリカ側の視点を解説
Salman Shaikh (以下SS)-Director, Brookings Institute Doha :
以下、討論のなかからいくつかの点を抜き出す。
国連加盟問題:
・PJ:現状パレスチナ側が具体的に国連のどこへ要請するのか分からないので、まだ正確には状況を検討できない(UNの安全保障理事会に行くのか、または安全保障理事会をバイパスして、総会の場に行くのか)。安全保障理事会に行く場合アメリカは拒否権を発動するだろう。総会の場に行く場合は参加国へのアピールを通じてパレスチナ側は自信の地位の向上、それによってイスラエルとの交渉上もレバレッジが得られるかもしれない。
パレスチナ・イスラエル協議
・PJ:現状のパレスチナとイスラエル間協議のそもそもの問題は、イスラエルのネタニヤフ首相とパレスチナのアッバス議長との間で信頼関係がまったくなく、協議そのものを可能にする条件がないこと。
・SS:(上記)信頼関係を醸成できない大きな原因の一つはイスラエルがWest Bankへの入植(Settlement)を継続している点。パレスチナ側は18か月に渡り、イスラエル側の入植者が3倍になるのを見てきた。アッバス議長が望んでいるのは(パレスチナが国家として承認されることで)イスラエルとの関係を国家対国家の関係にして、交渉のポイントを変えることではないか。
サウジアラビア・アメリカの関係
・PJ:(アメリカとサウジアラビアの関係について問われて)現状アラブ諸国でおこっている民主化の影響によりアメリカとサウジアラビアの長年の同盟関係に負担がかかっていることは事実。と同時にアメリカとサウジアラビアでは利益が一致する領域はある(イランの核問題やイエメン等)。
・SS:サウジアラビアとアメリカの同盟関係は1940年代以降(あるいはもっと以前から)、中東を形作ってきた。今回のアラブの民主化に伴い新しい中東がどのようになるのかはまだわからないが、将来の中東は今後のアラブ諸国とイスラエルとの間の争いがどのように進行するのかによって形作られる気配が濃厚だと思う。
・JK:(現状アラブ諸国がアメリカに対して持つイメージについて聞かれて)アラブ諸国はアメリカが民主化運動に対して払った労力について一定の敬意を払っていると思う。ただし、現状の混乱が収まった後には(when the dust settled)、「パレスチナはどうなるのだ」という点にアラブ側の注意が行くことになる。この点についてリビアからも同じ疑問が早期に出されるだろう。パレスチナ問題はアラブ側にとってとても重要な問題である。アメリカはこの問題について手当てする必要がある。状況はイスラエルにとっても刻一刻と変わっている。直近イスラエルは過去にないほどのプレッシャーにさらされている。この問題についてトルコはアラブ側についている。エジプトも。イスラエルはアラブをより対等の立場で扱う必要がある。