2012年4月29日日曜日

アメリカのパキスタン空爆によるパシュトン人の被害

パキスタンとアフガニスタンの国境沿いに多く住むパシュトゥン人がアメリカの爆撃で負っている被害について扱ったNew York Timesの記事を訳した(Clive Staford Smith"For Our Allies, Death From Above")
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記事の背景知識として地図を下に載せた。記事中にでてくるワジリスタン地域は右地図上の青いエリアの下部に位置する。右地図の青いエリアは部族地域(Federally Administratered Tribal Areas)と呼ばれパキスタン領内にあるが実質的にパキスタンの支配は及ばずパシュトゥン人達が部族の掟によって支配している地域。ここはタリバンやアフガニスタンを含むテロリストの拠点となっているとされている。

  出所: WorldPress                                  出所: Councils on Foreign Relations
パシュトゥン人はアフガニスタンとパキスタンに住む民族(左地図を参照)であり、アフガニスタンの総人口約3,000万のうちの42%を占めアフガニスタンでは最大の民族。パキスタンでは総人口1億8千700万のうちの15%を占めパンジャーブ人に続いて2番目に多い民族(CIAより)。両国で約5,000万人いるといわれる。
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無人攻撃機については以前グリーンウォルドの記事を載せたさいに触れたが、文字通り人が操縦しない無人の航空爆撃機で、アメリカはこれをパキスタンの主権の及ぶ区域で使用しタリバン・アルカイダの掃討を行っている。正確な数は判明していないが攻撃により市民への誤爆がでているといわれている。
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タリバンの構成員の多くはパシュトゥン人であるが、これはパシュトゥン人はタリバンである、ということを意味するわけではない。現在のアフガニスタン大統領のカルザイはパシュトゥーン人の部族の出身であるが、タリバンには反対している。

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New York Times, Op-ed Contribution
By Cleve Stafford Smith
Published: November 3, 2011

我等の味方のため、空から死をもたらす
クリーブ・スタッフォード・スミス
2011年11月3日

先週の金曜日、私はパキスタンの首都イスラマバードで変わったミーティングに参加した。そのミーティングはパキスタンとアフガニスタンの国境沿いに住むパシュトゥン(Pashtun)部族の年長者たちが、彼らの住む地域でCIAによって行われている謎が多い無人攻撃機による軍事作戦に関する彼らの知見を西洋人に初めて述べるために企画された。自身の意見を述べるため20人の男性がミーティングに訪れた。何人かは、このアメリカ人と触れ合う珍しい機会を経験させるため、自身の子供を連れてきた。合わせると全部で60人の村人がこのミーティングのためにイスラマバードまで旅をしてきた。

ミーティングは伝統的なジルガ(jirga)形式で行われた。パシュトゥン人の文化ではジルガは議会と裁判所を兼ねた役割を果たす。ジルガは伝統的な習わしであり、ジルガによってパシュトー人はルールをつくり、自分たちを不当に扱っているように思われる人々との間にある差異を平和的に解決してきた。

ミーティングの前日の夜、打ち解けるため、我々は夕食を共にした。食事の中で、私はタリク・アジズ(Tariq Aziz)という名前の少年にあった。彼は16歳だった。食事が進むにつれ、私の周囲の、こわばって、髭におおわれた顔はゆっくりと笑顔に変わっていった。タリクはもっとずっと早く笑顔を見せた。彼は顔の毛を自慢するには若すぎ、そして憎むことを学ぶにも若すぎた。

次の日、我々の参加するジルガは数時間続いた。私は通訳を雇っていたが、一人一人の男たちの話の要点は明確だった。アメリカの無人攻撃機(drone)はヘルファイア―ミサイルを撃ち込むまで、彼らの家の上を一日中飛び回っている。ミサイルはしばしば真夜中から夜明けの間に撃ち込まれる。死が彼らの周囲のどこにでも潜んでいる。私の番になったとき、私は(注:この問題に関する)アメリカの公式の立場を述べた。ミサイルは精度の高い攻撃であり、罪のない市民はこの15ヶ月の間に誰も殺されていない。私のコメントはあざけりの鼻息に会った。私はその大人たちに対し、彼らの苦境をアメリカの人々にわからせる唯一の手段は、市民が殺されたという物理的な証拠を示すしかないと述べた。その中の3人は、かなりの危険を冒して、6個のミサイルの破片を集めていた。彼らは市民の虐殺に関する100枚以上の写真をとっていた。

一例として、彼らは20108月、CIAによるならば誤爆は起こらなかったとされる時期において、死亡した子供の写真とミサイルの破片をマッチさせてみせた。この作業によって彼らの怒りがより感じ取れるものになった。証拠を集めるのは危険な仕事だ。無人攻撃機だけが唯一の敵ではない。パキスタンの軍隊はその地域からジャーナリストを締め出している。したがって真実は手に入れがたい。市民を殺した無人攻撃機による空爆を調査していた男がタリバンに捕えられ、アメリカのスパイであるとの疑惑から63日間拘留された。

その日の終わりになって、タリクが前に踏み出した。彼は家族を将来の危険から守るためにそれが役に立つのであれば、自分が証拠を集めることに志願した。我々はそれを行う前にもう少し考えてみるよう言った。カメラを持っていれば、彼は極右・極左勢力の敵意を買うかもしれない。しかし、軍隊が彼を傷つける機会は訪れなかった。月曜日、彼は12歳のいとこ、ワヒード・カーン(Waheed Kahn)とともにCIAの無人攻撃機による空爆によって殺された。2人が彼らの叔母さんをピックアップし(タリクが車を運転した)、彼女をNorakの村に帰すために出向いていたとき、彼らの短い人生はヘルファイアミサイルの爆撃で絶たれた。

私の誤りはワジリスタン(Waziristan)地域における無人攻撃機による爆撃を、抽象的な法理論の観点から見ていたことだった ―リチャードニクソン大統領による1970年のカンボジアへの爆撃に類似した、あからさまなパキスタンの主権の侵害として。

けれど今、突然、問題はとてもリアルで個人的なものになった。タリクはよい子だった。そして勇気があった。つい最近、友情から私の暖かい手が彼の暖かい手に触れた。けれど3日の間に、彼の手は死んで冷たくなった。私の政府によって生じた死後硬直。そしてタリクの親戚を含む家族は、ついほんの最近まで平和のため我々の同盟国になることを望んでいたのに、アメリカのミサイルによって引き裂かれてしまった。まず間違いなく、和解への我々のあらゆる努力は無駄なものになるだろう。

クリーブ・スタッフォード・スミス アメリカの法律家、囚人の権利を擁護する団体, Reprieveのディレクター
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2012年4月2日月曜日

北朝鮮がお嫌い?

與那覇潤「中国化する日本」より:
さる朝鮮研究者の方も仰っていたことなのですが、どういうわけか昨今のわが国では、北朝鮮が嫌いな日本人ほど日本を北朝鮮にしたがる傾向がある気がします。北朝鮮でさえ核武装したのだから日本もそうしろ、経済封鎖で飢えても国家独立のためなら我慢すべき、とか。強力な外交のために報道の自由を規制しろ、政府の命令に従えない人間に人権なんか認めるな、とか。徴兵・徴農で過酷な現場に放り込んで甘ったれた国民性を叩きなおせ、とか。(P283)